米国の金融業界、裁判制度などが良く判る 告白

◎  告白 (文春文庫) 井口 俊英


あの1995年の1000億円の損失を出した大和銀行ニューヨーク支店での巨額損失事件の
張本人が書いた事件の告白本。


415ページの本で、始めの100ページくらいまでは読むのが少々辛い。
本人が巨額な損失をして、それを偽装したことを告白し、
その後、逮捕・拘置される辺りまでは、
本人の辛さも判るが、何をしたんだと言う思いもある。


しかし、同時に
アメリカでの金融状況、投資の仕方、日米の金融、企業犯罪への考え方の相違、
などなど非常に面白い。
10年以上前の状況だが、ここまで実情を伝える本はないと思われる。


100ページを過ぎると、著者がアメリカへ行ったときからに時間が戻る。
大和銀行に入行してからの仕事など、金融の処理方法、アメリカの暮らし、考え方など
相変わらず面白い。


何度も言及されているように、最大の問題は、
売買担当者と支払担当者が同一人物で
牽制機能が全く働いていないこと。
本来金融機関ではお金を扱うので一番大切な機能のはず。
大和銀行の最大の失敗のようだ。


日本企業の社員への対処方法が海外では通じないことも問題。
日本企業というよりは、
日本人の感覚(生活、仕事)が海外では違うことも重要な点。
これから海外赴任するような人は読むべき本です。
アメリカという社会の日本人への本心、建前で攻めてくるアメリカの汚さも感じる。
私は感じたことがないが、
日本企業などが優位に立つと、攻めてくるのだろうな。


読んだ本は、文庫化されたほうの本で、
単行本ではなかった、出版後の経緯が面白い。
アメリカの非暴力犯罪者が収監されるキャンプなる監獄での生活の素晴らしさも面白い。
単行本よりは、文庫本が絶対お薦め。


この本は、小説に近い読み物と思っていたが、
黄色いラインマークでいっぱいになってしまった。
黄色いマーカーは、
・金融用語(日英)
・金融の仕掛け
アメリカの社会の仕組み
・企業・社会の日米の相違
・日本企業の理不尽さ
などなど
予想外の面白さ、参考になる部分の多さにも驚きの本だった。


著者は、以外にも同じ歳でした。
同じ歳でありながら、これだけの波乱万丈の経験は凄いことです。


下記のWikipediaでも事件の概要、年毎の出来事などが判ります。



参考:
大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件@Wikipedia
井口俊英@Wikipedia