巨大システムの終焉

2009/8/26にアメリカンエアラインの親会社AMRが、
次世代の航空会社システム開発のためにHPと契約と発表。


1960年からサービスを提供しているSabreは、ITの成功事例として盛んに取り上げられた。
2000年にはアメリカンの子会社から独立し、Americanは2014年までSabreを利用する契約だ。


IT業界では、こんなに有名なSabreで、26日の発表はアメリカでは幾つもの新聞記事になっているのに、
日本では記事になっていない。
アメリカの航空会社のシステムの話なので,日本のメディアは,余り興味がないのかな?


一番詳しい記事
http://blogs.forrester.com/ebusiness_strategy/2009/08/end-of-an-era-amr-corporation-to-move-key-airline-systems-from-sabre-to-hewlettpackard.html
からメモ。


・開発には4,5年掛かる。
・HPではJetStreamという名前のシステムを作るようだが、基は去年買収したEDSのシステムのようだ。
・JetStreamは,
Reservations,Airport departure control system (DCS), Baggage service, Scheduling, Pricing/faring, Revenue management
というシステム機能を持つと言うことは,航空会社システムのほぼ全て。
・且つ,JetStreamは,open source, service oriented architecture (SOA), cloud computing
で作るなどと発表されている。
これは相変わらずのIT業界のバズワードだな,まあ営業言葉。
・モジュール構造(building block)で行くよと言っているのは,非常に正しいというか,当たり前。
・今までのPNR(Passenger Name Record)中心のシステムでなく,顧客中心のシステムにする
ということは、今では当然の考え方。
ユニシスが開発中のANAの次期システムも顧客中心。
しかし,これもIT屋からの売り込みの可能性が高いな。
・現状のAAの全ての仕掛け(コールセンター,Web,キオスク,Handheldデバイス
とリンクするという。
・ボストンでハンドヘルドのディバイスをテスト中といっている。
・ハンドヘルドデバイス:”to check bags and provide gate information, flight times, and
boarding status from anywhere in the building” 
http://www.boston.com/business/articles/2009/07/24/airline_tests_mobile_bag_check_in/
とのことなので,全ての空港機能。でもインターフェースの問題はないでしょう。
・記事では,HPがNoStopを持っているから,これを使うのだろうなどと言っている
が,昔と違ってNoStopのテクノロジーはそんなに大きな相違にはなっていないはず。
逆にNoStopというだけで高い費用になり,メリットは薄いと思おうが?違うか?
・EDSが航空系の強いからと書かれている
が,当たり前で,同じDallas Fortworthエリアだからな。
ましてロス・ペローはDWF空港エリアの土地問題で大統領選に出馬したというくらいで,
現在のEDSでもAAとかDWFというエリアとは関係が深いはず。
・今までの航空系に強いベンダーは,
Accenture (which owns the Navitaire reservations system), Amadeus, IBM, ITA Software, SITA, Travelport GDS and, of course, Sabre.”



他の記事からのメモ
・EDSは去年HPに買収され,今回の発表でHPの裏はEDSだろうなと思っていたら,当たりのようだ。
http://www.mercurynews.com/business/ci_13212256



その他メモ(想像も含む)
・Sabreは1960年からサービスを開始しているので,50年に渡るシステム。
IBMが特別に高速に大量トランザクション処理をするために開発したOS TPFを基盤にしている。


・TPFはトランザクション処理としては優秀なようだが,
プログラミング言語がAssembler主体で,
TPFのシステムの開発・保守は大きな問題になっている。
各航空会社、GDSサービス会社はTPFからの脱却が永らく、大きな課題だ。
しかし,大きく成功した会社,システムは未だない。


・ITA Softwareなども有名になったが,まだまだ問題はあるようだ。
今回のAmericanでの場合もITA Softwareは採用されなかった。


・航空業界ではデファクトになりつつあるAmadeusのFlexPricerなども,
表面的には新規のシステムのように見えるが,
裏側では旧態依然とした ホストベースのシステムが動いているように見える。
実際にFlexPricerの設定を変更してトランザクションを確認する画面がホスト風だった。
多分、非常に高速にレスポンスを返すホストシステムから受け取るデータを、
いろいろな組み合わせられる仕掛けの,素晴らしいアプリケーションのように見える。



資料:
Sabreの概要
Sabre (computer system) - Wikipedia, the free encyclopedia