ミステリーやハードボイルドより面白い地政学 100年予測

◎ 100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図


100年も先のことは誰にも判らないが,
この著者は地政学的観点から100年先までの世界を予測。


これが面白い。
下手なミステリー,ハードボイルド,SFなんかよりも100倍くらい面白い。
380ページもの内容の濃い本なので読むのには少々リキが必要だが,
面白いこと請け合い。
表のオビには2009年1月Amazon Best of the Monthとなっているので,
非常に有名な本,ベストセラーのようだ。
普段から流行のものは避けるようにしていので,この本を全く知らなかった。


前半は少々固めにヨーロッパの地形,歴史などから,
ロシアの衰退などを紐解き,
中国の分裂などの話に進む。


そんな前半では,
何故アメリカが世界中の紛争に関っていくのか
地政学的分析での説明が判りやすい。


また人口問題が多くの問題を引き起こし,
そして移民を受け入れるために数々の施策をする話には納得。
そして将来はロボットの発達によって,
労働力としての移民が不要になって,
メキシコからの移民を帰そうとして,
アメリカとメキシコの紛争が引き起こされる,
など,地政学は非常に想像力を必要とする学問のようだ。


2050年の予測辺りから面白くなる。
時代は宇宙戦争の時代になるという。
3個のアメリカの観測衛星基地が世界を観測していて,
戦争を含めた情報の中心になる。
日本とトルコが台頭してきて,
観測衛星の裏をかくために月の裏側を掘ってロケット打ち上げの実験を繰り返し,
沢山の月の岩にジェット推進機を付けて,
観測衛星を攻撃する・・・・
など,話はSF的に展開。


結局は日本もトルコも敗れるが,
次は2080年頃にメキシコが台頭してきて,
人種的問題も含めてアメリカと抗争になる。



一見奇想天外な気もするが,著者のジョージ・フリードマンは後書きで
・未来を予測するにあたって,常識はほぼ必ずわれわれを裏切る
地政学を主な指針として,二一世紀がどのようなものになるかを感じ取ることだ。
・二一世紀がどのような感じになるのか,その感触を伝えることが自分の使命だと考えている。
などと述べていて,
確かに未来のイメージが出来る作品になっている。


宇宙戦争の中で,トルコがポーランドを攻め込む場面では,
巨大なパラボナアンテナを宇宙空間に浮かべ,
太陽発電をして,そのエネルギーをマイクロ波送信システムっで地上送信する。
これが過去の技術の発達の例を使って説明される。
こういう歴史から未来に起こりえる事象を予測する力が凄い。



但し,イマイチ納得できないのが,
著者が初めからアメリカはあと100年は強大な力を持ち続けるという点と
アフリカについて全く言及していない点。
特にアフリカは人口問題の解決としては,
移民の供給元としてあるように思うのだが???



素晴らしい本でした。
先に読んだドラッカーネクスト・ソサエティと比べながら読むと面白そう。