凄い冒険小説 斜影はるかな国

◎  斜影はるかな国


1991年頃に朝日新聞の連載だったようだ。
文庫本で700ページもの大作。
1990年,91年に1936年のスペイン内乱に外人部隊にいた日本人を探す冒険小説。
1990年から1936年,日本からスペイン,ロンドン,と舞台を目まぐるしく変わり,
登場人物も,日本人,スペイン人,メキシコ人,ロシア人,イギリス人,
通信社記者,テロリスト,軍人,警官,ギター引きなどをまじえて,
大きな迷路を行き来しながら,1936年の謎を解き明かす。


話も面白いし,場面の変わり方,登場人物,それぞれの謎,秘密など
非常に良く組まれた謎解きの面白さ。


推理小説の良くある書き方で,
登場人物一覧,マドリッド,スペインの地図が本の初めにあり,
これを見ながら読み進むと,何となく現場にいるような雰囲気。


読み始めは単純な話と思うが,
後半に行くに従って,段々仕掛けが複雑になっていく。
前半で複雑さを仕掛けているのだろうが,
こういう仕掛けは,初めから考えて書くのかなと,
この手の推理小説作家の凄さを思い知らされる。


複雑過ぎて,少々粗さが見えるところもあるが,
新聞連載で著者が乗っているときと落ち込んでいる時の差なのだろう。


著者の逢坂剛さんが,巻末に
”会社員の身で,毎日締め切りに追われる新聞の連載”
と書かれていて,
サラリーマンでありながら,これだけの大作を執筆,
それも新聞連載という凄さ。
また,この1991年時点では
逢坂さんは未だサラリーマンだったということも意外だ。


素晴らしい作品でした。