時差を利用しての作業で、コストと労働力のセーブ

1997年11月だったと思う、
米国本社からPOSサーバのアプリ更新の指示が来た。


入社3ヶ月ほどで、
何も判っていないシステム部長だったので、
部下に方法、過去の対処などを聞いた。


過去に2回アップグレードをしたことがある、
2回ともアメリカからSEが来て、
全国の店舗を回ってPOSのアップグレードを実施し
日本のシステム部は何もしていないという。


今回は、コスト削減のために、アメリカのSEが来日しない
日本で実施しろとの指示。


店舗は午前中に開店し、夜12時頃まで営業している。
したがって、POSのアップグレードは夜間作業になる。


店舗は全国に散らばって45店舗ある。
場所は札幌2店、大阪2店、栃木2店、あとは東京周辺という点在状況。


各店舗のPOSシステムはネットワーク接続はされてなく、
障害時などは、電話線経由でモデム接続してシステムメンテナンスをしていた。


時々、どうにも判らないトラブルが発生し、
アメリカのサポート担当者がアメリカからモデムで店舗システムに接続して
障害対応をしていた。


アップグレード作業では、現場に行く必要があるようだ。


システム部には2名の部下しかいない。
彼らが各店舗のPOS,本社の経理財務システム、社内LAN、メールと
いろいろなシステムを運用している。


たった二人しかいない部下が
毎晩のように徹夜して
45店舗を実際に回ってのアップグレードは大変なことだ。
本社や他店舗へのサポートができない。



困った。
数日考えて思いついたのは、
日本の夜中はアメリカは昼間だよなということ。


つまり、
日本の夜間作業をアメリカから実施できないか、
という思いつきだった。


アメリカのサポート担当者に相談すると、
あっさりとOKとなった。



思いつきは良かったが、これからが大変だった。


POSサーバのHDD容量は大きくないので、
テープをマウントした状態で、アップグレードを実行しないといけないことが判明。


アップグレード用のテープから、
数回のコマンド打ち込みでアップグレードが実行できることを確認し、
操作手順を作成。


店舗のPOSサーバは機種は同じだったが、
モリー容量、HDD容量、残容量などに相違があった。
これを3種類にそろえ、3種類毎のアップグレード手順を作成、テストを繰り返した。


アップグレード実施スケジュールを作成。


始めの4店舗までは、1店舗ずつ数日おきに実施。
そして始めの2店舗は、私と部下1名が
緊急時対応のために実際に店舗で待機し、徹夜。
その後、2店舗は現場待機なしで、アメリカからだけの作業。
その後は、2店舗同時にアップグレード。
2店舗同時を2回ほど繰り返し、
その後、実施間隔1日おき程度に頻度を多くする。
これで何とか2ヶ月以内に終了するスケジュールができた。


各店舗へのアップグレード・テープ、手順の説明書きの配布、
店長への翌日早めの出社依頼、
緊急連絡先の確認なども完了。


各店舗では、
閉店後にいつものようにバックアップをテープに取り、
これを保管し、アップグレード用テープをマウント。
そして、英語で書いた、アップグレード開始指示書を
アメリカの担当者へFAXで送付。


アップグレードに失敗した場合は、
前日のバックアップからの戻し作業が入るため、
店長の早朝出勤の可能性を伝えてあった。


私らは夜にアメリカの担当者に電話で実施店舗の確認、
翌朝にもアメリカの担当者に電話で状況確認。
いざと言う場合は、該当店舗の店長に緊急出社の依頼をする段取り。



などなど、段取りを作るだけでも大変な作業だった。
実施中の2ヶ月間あまりは、
可也の心労があった。


しかし、45店舗全て、殆ど問題なくアップグレードが完了した。
1店舗だけ、処理速度が遅く、翌朝の開店ぎりぎりの完了があった。



この対応のおかげで、
来日および日本国内旅費の削減、
日本ではシステム部社員の夜間作業が大幅に削減できた。


大成功だった。


この例も、
イデアは大胆に、
実行に関しては詳細な対応計画、テスト、思いつく限りのリスク対応を実施

したことが成功の理由だったと思っている。