犯罪者視点での防犯 犯罪者はどこに目をつけているか

◎  犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)


犯罪者へのインタビュー、書籍などから
犯罪研究者が、防犯方法を書き出している。


自分自身、家、近隣、都市と段々対象を広くしていき
それぞれの防犯対策を論じている。


犯罪者の視点で述べられているので、納得できる。


犯罪者にもアマチュア、プロ、プロ中のプロといろいろとあり、
犯行の方法、対象の見方が少々違う。


マチュア犯罪者は外見でも判るが、
プロは見た目も犯罪者には見えない。


27ページ

犯罪は、犯罪者-被害者-環境という三者が交じり合う交点において起きる。犯罪者はこの一点を「機会」ととらえる。逆に、被害者にとっては「死角」である。「機会」と「死角」そういう表裏一体の関係にある。

防犯のためには、環境への対応が必要という。


28ページ

犯罪は日常生活の「歪み・割れ目・裂け目・希薄さ」などから生まれる。

だから、都市設計、隣近所の付き合いも重要という。

人間はヒトという動物で、自分勝手な欲望を「隙あらば」本能的に満たそうとする。だから現代社会では誰もが被害者になりうるし、加害者=犯罪者にもなりうる。

これも怖いよな。


35ページ

標的から5メートル以上離れた距離での犯罪者の行動には、罪種や手口に関わらず、多くの共通した行動原理(一般行動原理)がある。そして5メートルから先は罪種や手口、標的の特性によって違い(特殊行動原理)がある・・・・
・・・路上にいる個人の身体、家屋や塀の外側5メートル以内での危機は特殊行動原理に、それ以上離れると一般行動原理に(特殊なケースでは特殊行動原理にも)支配されていると考えられる。

5メートルというのが距離で、犯罪者の行動が変る。
その後のページで、500メートル以内で、プロは犯罪をすることを意識し、
200メートル以内で、プロ、セミプロは犯行を意識し、獲物を探す。
20メートル以内では、アマでも犯行を意識し始める。


38ページ

この意思決定を支えるのは、もと犯罪者達の証言や調査によれば、「いい獲物がある」「見とがめられない」「やりやすい」という三つの心理だと言う。

ということで、、
・犯罪を犯しやすい・侵入しやすい
・いい獲物がある
・逃げやすい
とういう三つの条件を満たしたとき、犯罪の対象となる


48ページ

「やりにくくする」八つの基本手法
・・・・・・・・・・・・・
具体的にはどうすればいいのか。やはり、迷ったときには単純化してみることだ。
①領域性(自分たちの街や空間である、という境界をつくる)
②監視:見守り性(他人に関心を持つ、注視する)
動線性(人の動きまわる道路や回路、場合によっては犯罪者が空けた隙間をコントロールする)
④拘置性(不法なことをしたら、そこに留め置く)
という四つのポイントの確保である。・・・・・・・・・・・・・
1.遮断:・・・・・・・・・
2.威嚇:監視性を中心として・・・・
3.阻止:監視性を中心として・・・・
4.回避:動線性を中心として監視性で補助しながら・・・・
5.隔離:拘置性と動線性を中心として・・・・
6.強化・教育:領域性と動線性を協働させながら・・・・
7.矯正(教育):拘置性と監視性を・・・・
8.環境改善:・・・社会環境を全体として改善・・・



75ページ

すれ違う瞬間には、相手との間が「相手の身長X0.8」は空くように心がけて歩かねばならない。人間は瞬間的に相手をつかもうとする時、一歩前に足を出し、手を伸ばすと言う動作をとる。その時、最大限に伸ばした手の先までの距離が、先ほどの式となるからだ。

周りの人との距離感はいつも気になっている。


76ページ

私たち現代人の多くは、こうした体感距離の取り方を失っている。都会の雑踏の人々の行き交いのデタラメさを見るとよく分かる。だが逆に、雑踏の中で人とすれ違いを学習し体感距離を取り戻すこともできる。雑踏は都市に生きる学習空間なのである。

現代はネットでかでなく、人が集まる、都会では人の感性も変るようだ。

被害に遭遇した(あるいはしかけた)場合は、ともかく20メートルを全力で走り抜ける気持ちと馬力を持たねばならない。

距離感は重要なようだ。
本当は、これも元々は人間が本来は持っている距離感なのではないのか?


85ページ

異常なほど図々しいか、被害者の生活を熟知している場合を例外として、ほとんどの犯罪者は自分も怯えている。「殺すぞ」という脅し文句は、犯罪者自身の怯えの裏返しであることが多い。しかし生半可な抵抗をすると、犯罪者の怯えの反動として凶行に至る可能性が高い。

これも怖いな。
一般の人は、被害者となった場合には、余り犯人を刺激しない方がいいということか。


第三章の家の守りでは、犯罪にあう家のタイプが判る。
貴重品を隠す場所のリストも面白い。
これが泥棒が家に入ってから、貴重品を探す場所だ。


126ページ

「自分たちが本当に『これはやめとこう』と思うのは、入ろうと思った瞬間に、通りすがりの人に声をかけられる、じっと見られる、変な音や光がパッと付くことです。

やはり、昔ながらの隣近所の付き合いなどが重要ということ。


128ページ

本章「家の守り」は最終的に、甘えを排した自立・自律・自衛の「三自」に行き着く。それは同時に、次章で述べる「近隣の守り」へとつながる。



129ページ

防犯は向う三軒両隣が協力しなければ、その効果はない

昔から言われている、近所付き合いは重要なようだ。
これも現代ではなくなりつつある。


145ページ

次のような点が「やりやすいマチ」の目安になる。
ゴミが散乱している、お知らせ掲示板やポスターが剥がれてかけている、塀の落書きが多い、家の前の自転車がバラバラに置かれている、庭木や道路の樹木が伸び放題、小さな公園や花壇の手入れがされていない・・・・

いわゆる「割れ窓理論」は正しいようだ。


163ページ

都市犯罪は大都市を中心とした都市病理によってもたらされるのではなく、今や日本の病理によるものと考えねばなるまい。

情報、道路の発達がもたらした、悪い面なのだろう。



セキュリティを考えるときに参考になると思って読んだが、
リアル世界での犯罪は怖い。
また、インターネットなどによる情報伝達の発達、
高速道路などの発達による移動の便利さなどで
人間の感性、行動も大きく変化し、
犯罪者が付け入る隙は沢山あるようだ。


リアル世界への人間の感性はまだ良いが、
今後は、ネット世界での犯罪への危なさを感知する感性の醸成が重要、必要だ。