イランの歴史と今後のイランとアメリカの啓示 イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図

◎ イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図 (朝日新書)


著者の高橋和夫さんの放送大学の授業を聞いて、
高橋さんの著作を読みたくて、最新作のこの本を選んだ。


以前読んだ放送大学の教科書、現代の国際政治 (放送大学教材) は割とゆっくりとしたペースでの話だった。
しかし、この本は、これでもかこれでもかという感じで、
著者のイラン、周辺国との歴史、民族感情、現状などテンコ盛りの内容。


前半の殆どを占めるイランの歴史では、
非常に多くの氏名、地名、それも日本では想像も付かないような氏名が出て生きて、
途中から混乱してきた。


人間は7名ほどの氏名しか覚えられないので、
推理小説では登場人物は絞るという話を聞いたことがあるが
この本では逆の状態で、途中から混乱してきた。


しかし、著者のイラン、中東への知識、考察には敬服した。


始めにアメリカとの関係も出てくるが、
後半までは、殆どイランの政治、戦争、宗教などの歴史的説明に費やされている。


お陰で、イランはアラブでないこと、
元々ペルシャで偉大な国であったことなどが判った。


後半になって、やっと現在の話になり、アメリカとの活計が登場。


アメリカもどうし様もないなという感じも読み取れる。


冷戦終了後、アメリカが中東を重視し、
今後イスラエルとの関係もあり、イランとの戦争の可能性もあることも
など、非常に怖い可能性が理解できた。


またアメリカ人もイラン人も相互に信用していないという話も知らなかった。
アメリカ人は大使館占領事件、イランでは1953年のテロにアメリカが関与、
ということで相互に信用していないとのこと。


平和をむさぼる日本国民としては、世界状況を知る良い本だ。


気になる部分のメモ


255ページ

アメリカの世界戦略の中心に中東政策が位置するようになったのだ。その目標として、以前から継続しているイスラエルの安全保障と石油の確保に加え、アメリカは4つの目標を中東で追及し始めた。繰り返そう、?テロ組織の壊滅、?大量破壊兵器の拡散の阻止、?イスラエルの安全保障、?石油の確保、である。



285ページ

イスラエルでは2009年2月に総選挙が行われ、野党のリクードの党首で元首相のネタニヤフが首相に返り咲いた。ネタニヤフは、イスラエルが生存の機器に瀕しているとイランの脅威を煽っている。イランはナチス・ドイツであり、現在は1938年である。状況は第二次世界大戦勃発寸前の時期と同じように危機的だ、というわかりやすい例えで国民に訴えている人物である。