納得することばかり 音楽の聴き方 / 岡田 暁
◎ 音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書) 岡田 暁
やっと読み終わった。
2週間前に沼田さんの日記でこの本を知り,
検索すると皆さん誉めているので,その日の帰りに購入。
非常に読み応えのある音楽,音楽家などの著作などを紹介しての
音楽の聴き方を説明する本。
クラシックが主体なので,
クラシックの作曲家,演奏者などの名前,曲目などの紹介も多く,
判らない,知らないことが多く,
読むのが辛い部分もある。
しかし,音楽とは何なのか,どう聞くべきなのかなど,
一つひとつ納得,感心することばかり。
音楽を「する」,「聴く」,「語る」に分けて,
作曲家/演奏者,聴衆などの立場で音楽を他の人の分析を紹介し,自論を展開していく。
この紹介が多岐に渡る音楽分野。
究極の芸術体験とはひょっとすると「未知なるものとの遭遇」であるかもしれない・・・・
・・・人生観が変わってしまうような音楽体験はしばしば,人がそのジャンルに夢中になり始めたばかりの頃に集中する傾向があるように思う。・・・対するに,最近でこの種の経験をしたのは,良く知っているはずのクラシックではなくて,・・・・
またダラー・ブランドの『アフリカン・ピアノ』は,私がそれまで知っていたブルーノート系のモダン・ジャズとは全く性格が違うもので,赤茶けた大地を連想させる荒々しいタッチとアラブ風の旋法,にもかあかわらず全曲を貫いている透明な抒情感,そして40分近く延々と続けられる執拗なオスティナートの呪詛に取り憑かれてしまい,しばらくの間,目がさめているときはずっと,それが耳の中で唸り続けていたのを覚えている。
全く同感。
アフリカン・ピアノが発売されて当時のジャズファンは全く同じ思いでいた筈だ。
・・・ベートーヴェンが,あのバリトンの第一声が出てくるまでにどれほど用意周到に,そして執念深く,音と音の「関係の糸」を張り巡らし,カラクリを仕掛け,「あの瞬間」にそれまでの重みが究極の楽器<人声>にかかるような巨大な逆三角形のバランスを計算したことか・・・
この文章で,昔経験したベートーヴェンの凄さを感じたことが正しかったと思った。
昔聴いた,ロシアの有名なピアニストのコンサートで,
このピアニストが1音か2音,音を間違えたと思った瞬間に,
ベートーヴェンの曲が崩れたと感じた。
ベートーヴェンの曲は構成ががっちりとしていて,
一音も違えても,曲全体が壊れてしまう,
これがベートーヴェンの凄さなのかと感じた。
同時にバッハは演奏者が曲を崩しても,
曲全体は崩れることもなく全くなく,ジャズに近いとも感じた。
私は本を読みながら,面白い部分には黄色いマーカーで線を引くが,
この本は,まっ黄色になってしまったページが多くなってしまった。
第五章で終わりだと思ったが,
「おわりに」,「文献ガイド」,「あとがき」でも
まだまだ分析が続いている。
普通は後書きなどは読まないが,
この本は全て読まないとダメだ。
大量の情報,分析なので,何回も読み直しが必要なようだ。
音楽好きにはお薦めの本です。