日本の出版業界の問題の勉強

△ ブック革命


どこだかで電子書籍の始めの頃の本とか書かれていて,図書館で借りて読んだ。


2003年12月出版の本。
目次では期待できる話と思われた。


目次
第1章 ケータイ文庫は真夜中に読む―技術革新が可能にした新しいライフスタイル
第2章 芥川賞に変動の波―活字文化がデジタル文字に揺らぐ
第3章 作家が走るデジタル時代―明日の著作権はどうなるのか
第4章 日本再生電子プロジェクトXインキュベーターとしての「電子書籍コンソーシアム」
第5章 地球にやさしい電子書籍の使命―世界のEブックは、いま
第6章 ブック革命の地平―未来の文字文化の創造が始まった


1章は携帯電話での電子出版の争いから始まり,
話は著作者,出版業界,印刷業界,電子機器業界の争い,
統一策定,実験などの話が中心。


特徴的な,日本企業の変化への対応方法が判る。
商品,サービスの提供者側からの話ばかりが続き,
紙の書籍で持っている既得権を如何に維持していくか,
電子機器とかフォーマットの争いなどの話の連続。
それぞれの業界では読者のことを考えていない,
自分達の既得権を守ることを主体に考えている。


著者は,電子書籍のビジネス側の人の対応について記述したかったのだろうか?
こういうのは,当時の関係者には記録としては興味があるだろうが,
電子書籍の読者側は余り興味がないと思う。


この当時の電子書籍当事者,もしくは当事者に近い立場の人の意識は
こういう感覚なのだろう。
こういう意識の日本の業界では,
ティーブ・ジョブのiPhoneiPadなどのような
UIを提供することはできないだろうな。


日本の業界が独自フォーマットを制定していこうという姿勢は,
結局は世界的には受け入れられず,
将来的なマーケットを狭めている。
これは今言われている携帯電話だけでなく,
昔から変わってなく,幾つもの消滅した事例がある。
それも多大な税金を費やした。
戦後日本再興のための官僚の仕事の仕方で現代には合わない。


電子書籍が地球に優しいという5章も,
紙が如何に環境に問題という説明で,
これでは必ずしも電子書籍が環境として問題ないとはいえないと思う。


6章はグーテンベルクの聖書の書籍の話から始まり,
各国の電子図書館の動きなど,
歴史的な話から今後の展望的な話は興味深い。
5章までの視点と変わっているのが面白い。
そういう意味では,この本では日本の電子書籍失敗の説明になっているようだ。


巻末の文字と印刷・情報伝達の略歴は参考になる。