原発の問題が良く判った 原子炉時限爆弾

◎ 原子炉時限爆弾


この本は2010年に出版されているが、
東日本大震災で引き起こされた福島第一原発の問題が
明確に書かれている。予言されている。


序章のタイトルが”原発震災が日本を襲う”で
福島の状況を完全に予言。


原発自身の問題、
地震が何故起こるのかを地球の成り立ちから説明、
政治家、官僚・官庁、電力会社・原発関連組織そしてマスコミなどの問題。
全ての問題が指摘されている。
それも去年。


日本国民はだまされていると思う。
普通の汚職程度であれば良いが、
原発の問題は、日本全体のリスクであり、
大きさによってはアジア地区、全世界の人類の問題になる。
日本だけの問題ではないはず。


こういう事実を知らされていないのは、日本国民だけなのではないか?
だから地震原発事故発生で、世界中の国から自国民の日本撤退指示が出たのでは。


当時は大げさなと思ったが、
この本を読むと正しい判断だたのだと思う。


その後の対応、状況を見て、外人も戻ってきている。


この本を読んで、少々気になったのは、
海外、世界的な影響が述べられていない。
放射能は風で運ばれ、現在のように海水を汚染している。
問題は既に日本だけでなく、全世界の問題だと思うのだが。


こうなると日本の対処次第では、
日本が海外から封鎖される可能性もあると思われる。
特に、現状のような政府、官庁、東電のような
自分たちの都合の良い発表、対策ばかりだと。


この本は、多くの人に読んでもらいたい。
日本の現状の社会構造の問題も、この原発問題と同じだと思う。
日本人は目を覚ますべきだ。
日本のマスコミも、自覚を持つべきだ。


数年前に、中国や韓国では、
後20年、30年後には日本は消滅しているという予測があるとの記事を読んだが、
この本を読むと、政治・外交的な国家の消滅の可能性だけでなく、
地質的な消滅の可能性も指していたのかとも思った。



気になった文章をメモ。


59ページ

原発震災が起こった時に、テレビ局はNHKも民放も、政府や電力会社からの圧力を受けて、現地住民や国民に正しくその危険性を伝えないだろう、と確信させる出来事であった。

まさに予言通りの発表意、報道だった。


65ページ

したがって、地震があった時に、原子炉そのものはかなり頑丈に作られているが、もし原子炉が無事であっても、事故を防げるかどうかという議論になれば、原子炉の頑丈さにはほとんど意味はないのである。水が流れる回路のすべて、どこにも破壊が起こらないということが保証されなければ、大事故は防げないことになる。



同じく65ページ最後から

原子炉が建屋とタービン建屋は、まったく別の施工によって建てられ、基礎工事からすべてことなる建物で、この図とは違ってやや離れた場所にあるから、東海地震で予測されるような大地震では、地震の揺れが襲った時には、それぞれが全くことなる揺れ方をする。大きめの地震で、家の中の家具がバラバラに揺れるのと同じである。この時、原子炉とタービンのあいだがちょうど二つの離れたビルの回廊のように金属パイプで接続され、そのなかに高温度の熱水や水蒸気が激しい勢いで流れている。このパイプには、それぞれ左右から、原子炉とタービンの大きな重力が作用しているため、大地震のといきには、バラバラの大きな機械的ショックを受ける。一方が上に向かっていて動いている時に、他方が下に向かって動くと言うことが起こる。2009年の駿河湾地震では、5号機タービン建屋にひび割れが発生した。こんな建物は、700倍の東海地震で完全に崩壊する。



68ページ

さてもう一つ、原子炉建屋とタービン建屋が違う建物であることから、誰でも想像できる危険性があるはずだ。1〜2メートルもの隆起と激震が長い時間続いて、発電所内の電気の配線が切れてしまわないか、ということである。



69ページ

実はこの最終原稿を書いている最中の2010年6月17日に、東京電力福島第一原子力発電所2号機で、電源喪失事故が起こり、あわやメルトダウンn突入かという重大事故が発生したのだ。日本のマスコミは、20年前であれば、すべての新聞とテレビが大々的に報道したのだろうが、この時は、南アフリカのワールドカップ一色で、報道人として国民を守る責務を放棄して、この深刻な事故について殆ど無報道だった。ショックを受けた東京電力がくわしい経過を隠し、それを追求すべきメディアもないとは、実におそろしい時代になった。



94ページからの6ページ渡る話”原発震災で何が起こるか−−大都市圏の崩壊”
いきなり過去形で書かれた文章で、
実際に起きた事故かと思った。
驚愕、恐怖のストーリーだ。


157ページ

その時、これらの学者の所属する学会に電力会社が巨額の支援をおこなったので、学者の多くは実質的に電力会社の顧問として雇われる形となり、それが結局、地質学者・地震学者が「危険であるからやめなさい」と文句を言えない社会構造を生み出した。



159ページ

こうして1976年3月17日に浜岡原発1号機が営業運転を開始したのだ。そして石橋克彦氏による東海地震説が出され、浜岡原発の耐震性が激しく議論されることになったが、人間と言う生き物は一度嘘をつくと、何度も嘘をつかなければならない宿命を持っている。電力会社は、1号機が安全だと言った手前、2号機も大丈夫だと言い続けた。

企業でマネージメントとして働いていると、
一度出した施策は嘘を突き通してでも実行しないといけない宿命があるが、
リスクを考えると、間違いは訂正すべきだ。


175ページ

言い換えれば、日本の原発の耐震設計審査方針は、「大事故を絶対に起こさないために、果たして日本に原発を建設できるか」という、最も基本的な地球科学の疑問から出発しなかった。そして、現在も、その疑問を抱かない異常な人間たちが、審査をおこなっている。「いかにすれば原発を建設し、運転できるか」という結論を導くための、屁理屈の集大成理論である。



同じく175ページ後半

基本的に、日本の原子力産業は、プレートテクトニクスが確立される前に動き出した産業であるため、断片的な地質調査をおこなっただけで「安全だ」という結論を導き、地球科学について集団的無理な状態のまま、まったく進歩していない。



248ページ

水素原子が2個に酸素原子が結合して水H2Oになるが、普通の水素原子と違って、原子核中性子が1個くっつくと放射性物質の危険な水素になり、重くなるのでその水素を持った水を重水と呼ぶ。戦時中に原子爆弾の開発に使われて有名になった物質である。そこで原子力の世界では、重水に対しえ、普通の水を軽水と呼んでいる。したがって軽水炉という呼び名は、「普通の水を使って?原子炉の燃料を冷却し、?中性子を減速する原子炉」という意味である。現在の日本の商業用原発54基はすべて軽水炉である。





280ページ

しかしひと言述べるなら、これらは、「今後私たちが生き延びて始めて成り立つ」内容である。もし明日、日本と言う国家が、人間の生きられない国土に一変するとすれば、これまでの人生でおこなってきたすべての意味ある行為の意味が失われてしまうことに、私たちは気づかなければならないはずである。



282ページ

ここ十数年の日本で、大きく変わったことがある。それは、二十代、三十代、四十代の若者と働き盛りの人たちの大半が、このような社会的な問題に立ち上がって、活動しなくなったことである。勿論、活動する勇気ある若者はいるが、私たちの時代とは比較にならないほどの少数である。私たちの世代から見れば、ワカモノと言うより、バカモノになった、とさえ思われる激変である。

この部分は、少々異論があり、
現状の問題を作ったのは、著者の広瀬さんの世代が大きく絡んでいて、
問題意識のある人々は若い人にも多く、
意識の低い人は高齢者のも多いと思っている。



現状の原発地震の問題、
地球の成り立ちから何故日本が地震大国なのか、
そんな日本に原発を作ってしまった経緯、
と非常に広範囲の深い問題を記述されてい、判りやすい。


但し、過去の電力会社、御用学者、政治家とのご自身のやり取りでの
怒りが多かったのだろう
事実の中で、この辺の怒りが入り込んできて、
少々感情的な文章になり、話が判り難くなっている。


原発の原理、仕掛け、利点、問題点、ない場合の代替案、
地球の成り立ち、地震の原因、発生予測、
政治的、企業的、行政的な経緯など
広瀬さんたちの活動状況、対抗組織での状況
などが、もう少し順序だてて話をまとめなおせればと思っている。