ベトナムの町と小船での航海などの描写が凄い 黄金の島

◎  黄金の島(上) 黄金の島(下)


やくざが兄貴分に利用されて、タイに追いやられ、
そこでも狙われたのでベトナムへ逃げる。
ベトナムで貧困にあえぎ、日本へ渡ることを夢見る若者たちと
漁船で日本まで密航する話。


ベトナムの街の様子、人の暮らし、
荒波の中での日本までの航海など
細かい描写が素晴らしい。


これだけの詳細な描写をするためには、
実際の情報を詳細に知らないと書けないと思うのだが。
どうやって情報を入手するのだろか。


解説でこの著者の書き方の特徴、素晴らしさが説明されている。

三人称多視点の作品においても、各場面の視点はひとりの人物にはっきり限定されている。

つぎに、視点人物の知らないことを書かない点。これはリアリズム小説の基本だが、真保裕一ほど徹底している作家はめずらしい。たとえば、・・・・知らない人物から電話がかかってきたとしよう。普通の作家なら、おそらく「酒井という名の男から電話があった」と書いてしまうだろう。しかし、真保裕一は、「サカイ」と書く。・・・・
たとえば、・・・・主人公が受話器をとると、相手は前置き抜きに「今いいかしら?」という。たいていの作家なら、次に電話をかけてきた人物が誰であるかを説明するだろう。・・・・しかし、真保裕一は、まず、主人公にいきなり「なんて言いぐさだろうか」といわせ、読者を戸惑わせる。電話をかけてきたのが妻であることを明かすのはそのあとだ。しかも、そのときも「妻の美緒だった」とは書かず、「・・たった一人自宅ですごす夫に、妻の電話よりも優先すべきことがあると本気で思っているのか」という間接的な表現を使う。

こういう解説が判り易い。
これで読み方が変わりそうだ。