人の機微を書くようになった垣根さん 借金取りの王子

垣根 涼介さんの著作が好きなのに、やっと最新刊(2007年9月発行)の借金取りの王子を読んだ。


君たちに明日はないの続編で、
リストラを仕事にしている村上真介の退職勧告の会議から始まる話、5話。
前作では村上真介が主人公だったが、今回は話を引き出す部分だけで、
主は各リストラ対象者の生き様を淡々と語っていく。


ヒートアイランドでのハードボイルドで垣根さんの作品にひかれ、
ワイルド・ソウルでの壮絶な人生話とハードボイルドで完全にファンになった。
前作の 君たちに明日はないでも少し変わってきたなと思っていたが、
今回の作品では、ハードボイルドからは離れて、完全に人の生き様を書くようになったようだ。


特に表題になっている第3話の借金取りの王子が良い。
泣けそうなくらい良い。
第5話だけが、村上真介と彼女の話で、彼女が村上の会社の社長に引かれていく様子が語られ、
続編の話へのつながりが想像できる。


第2話の女難の相では、システム開発、プログラム開発の話が出てくる。
多分、システムは得意ではないのだろう、システム屋へ取材して小説にするのだろう。
しかし、いくら素晴らしいプログラマがいても、実際には良いシステムはできない。
システムが主要部分だないから良いが、取材だけでは実際とは少々違っているのだろう。



垣根さんが取材で書いた素晴らしい本、ワイルド・ソウル
特に上巻での悲惨なブラジル移民の話の部分を読んで欲しい。
当時の政府、外務省のブラジル移民の人々へのヒドイ仕打ちが丁寧に描かれている。
この本は、現実的な硬い話で、読むのが非常に辛いが、
そのうちにまた読まなきゃいけないと思っている。