常識的生き方の問題を指摘 愛の流刑地

◎   愛の流刑地〈上〉 ◎   愛の流刑地〈下〉


渡辺淳一さんを殆ど読んだことはなかった。
失楽園とか化身での映画化で、エロさばかり強調されていて、
何となく読む本とは思っていなかった。
先日読んだ、自身の話という 影絵 から興味が出てきた。


上巻は、書けなくなった作家が人妻と出会い、
その人妻を性的に開花させていく、性行為の連続。
この話をどう処理するのかと思って読んでいた。


下巻も始めは性行為が同様に続く。
しかし前半の終わりに、性行為が行き過ぎ、
”殺して”という女の願いで、首を絞め過ぎて殺してしまう。


ここから暗転して、殺人犯として捕らえられる。
少々暗くて、読むのを止めようかと思ったが、
読み進むと、日本の常識とか通俗性を問うのが主題なのだと思い始める。


・世間では素晴らしい夫と思われている、
大企業のエリートサラリーマンが家庭では妻のことを考えていない。
・かつてベストセラーを書いた小説家が書けなくなり、
15年後に素晴らしい小説を書いても、出版社では小説の素晴らしさを認めない。
・性的に興奮したときの行動を判断する検事、裁判官。
などなど、日本の常識などの問題を指摘しているように思う。


自分でも普段思っている、”判断できない日本人”の問題を指摘している。
渡辺千賀さんの”海外で勉強して働こう”の話とも共通しているように思う。


”恥ずかしいでしょ”という子供への言葉が普通の人を作っている。
他の人と違うことをすることが問題だという意識が問題。
”勉強して、良い大学に入って、大企業で一生真面目に働いて、人生を終える”
という時代ではない。
もっと多様性、自分のしたいことをして生きていく、
日本だけでなく世界を相手に生きていく人を
もっと育てないと、日本は世界から置いていかれると思っている。


またしばらくは渡辺 淳一さんにはまりそうだ。


愛の流刑地は映画化もだれているので、 DVDも借りてきて見ようかな。
でも、この手は映像では見るのが辛い。
多分映像ではエロさだけが強調されているのだろう。


参考:
愛の流刑地@Wikipedia
愛の流刑地@日本テレビ