素晴らしい情愛小説 失楽園

◎  失楽園〈上〉 (角川文庫) 渡辺 淳一 ◎  失楽園〈下)


へそ曲りだからか、ベストセラーとか話題の小説は全く読まない。
まして、この小説は映画化された時の、エロチックシーンが評判になって、
全く読む対象の小説ではなかった。


小説は殆どハードボイルド的な本ばかりだった。


2年ほど前に、藤田 宜永さんのセカンドライフを読んで、
中高年の少々色っぽい恋愛小説もいいなと思い、この系統も読み始めた。


渡辺淳一さんの始めに読んだ本は面白くなかった。
こんなもんかと思った。


自伝に近い話という影絵は面白かった。
数年前にネットでも話題になっていた、愛の流刑地は、
素晴らしい情愛小説で、且つ社会常識への疑問を投げかける小説で、
素晴らしいと思った。
上巻はエロチックシーンばかりだが、下巻の後半は凄い社会批判。


失楽園愛の流刑地と設定は似ている。
50台中盤の男性、30代後半の女性。
男性は、社会的には一応少々地位がある人でが、今は恵まれていない。


しかし失楽園は、情愛を通して行き、行ききって心中してしまう。
情愛が行き着いて、最高の状態の時に、このまま逝ってしまおうという話。


Wikipediaでは、”有島武郎の心中事件をモチーフといて”などと書かれているが、
阿部定の話の方がモチーフのように思うが。
いずれにしても、
愛し愛されて、最高の状態で逝ってしまうというのが最高の情愛ということのようだ。


常人には判らないエリアのようだが。


映画では、映画の宣伝だけかもしれないが、エロチックな場面ばかりが強調されているが、
原作は素晴らしい作品でした。


これもお薦め小説。


愛の流刑地と設定は似ているが、言いたいことは全く違うように思う。