面白い冒険推理小説 俺は鰯

◎  俺は鰯


4冊目か5冊目になる鳴海章の作品を読んだ。


また30過ぎの会社員が退職して事件に巻き込まれる話。


中国,台湾の歴史的な話も含んで,
大昔の陶器を追いかけて,
場所も日本,台湾と移っていく。
中国の歴史,陶器に詳しい人は,もっと面白いのだろうな。


題名の鰯(いわし)とは,
退職前に会社の社長に言われた話から,自分は鰯のようだということ。


この本の前に読んだ,狼の血風花と似た部分があって面白い。


調査会社を退職し,風俗系の女性とからみから始まる話は,風花と同じ。


高校のときのノンベエの同級生に付き合わず,その同級生が自殺してしまうなどは,
狼の血と同じ。


この3作品ともに,1999年に出版なので,同じような設定のアイデアになったのか。
面白い現象。


この”俺は鰯”で面白かった文章:

地球が回っていることを最初に発見したのはコペルニクスではなく,酔っぱらい

ゴールデンウィークだ,夏休みだ,といってはどこかへ出かけていく。・・・子供がいじめに遭わないようにどこかへ行くなんて,おっしゃるようにレジャーではありません。強迫観念ですよ。強迫観念が先行して,それで混雑している行楽地に行く。換算としているところじゃ,不安になるんです。

確信という言葉は,まず自分自身に向けられるべきなのだ

あとがきでは

物書きなら物書きらしく小説の中ですべてを語るべきで,あとがきなどプロにあるまじきいいわけだ,といわれたことがある

鳴海章さんは,世の中を斜めに見ているようなところがあるようだ。
私も同じだと思うが,真実だとも思う。